神奈川の大学生の私見と私感

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第2回 トマ・ピケティ「21世紀の資本」

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こんにちは、ここ数日でめっきり寒くなってきましたね。この週末は家に引きこもってひたすら本を読んでいたので、2日連続で「21世紀の資本」の記事が書けました。

今日は2章と3章のお話をしていきたいと思います。

第2章「経済成長ー幻想と現実」(77頁~116頁)

経済成長の要素

 

経済成長という漠然とした考えですが、このファクターはざっくり「人口増加」と「1人当たりの産出量の増加」の2つです。

「人口増加」はここ数世紀で比べると、現在は平均寿命の延びに対して出生率の低下が相殺する形で1~2%台で低成長をキープしています。(問題の単純化のため、ここでは労働力人口についての検討は控えさせていただきます。)「1人当たりの産出量の増加」は技術革新により達成しており、西欧・北米では同じく2%程度の成長をしています。全世界でならしてみると3%程度の経済成長率だそうです。

経済成長から考える格差問題と社会環境

 

上で分析した経済成長は、格差問題とどのような接点があるのでしょうか。まず「人口増加」ですが、これは相続財産の価値を引き下げることに役立ちます。相続した資産が少ないと世襲的な格差の拡大はなくなります。ここで注意が必要なのは、社会的な富のモビリティは高まるが、実力主義的な格差拡大に正当性を与えてしまうという結果にもなるとです。相続資産がほぼ均等であったとしても、社会的に失敗してしまい貧困に陥った人を「あの人は努力が足りなかったんだな」と見切りをつけるのは簡単ですが、正しい社会であるとは言い切れません。

「1人当たり産出量の増加」ひいては「経済成長」は購買力の増加をもたらします。購買力の上昇は社会環境の向上に大きく関連しています。自転車を例に挙げて過去と比較すると、性能のよくない自転車が国民の平均月収1か月分という非常に高価だったものが、確実に性能の上がった自転車を大体1週間分の給料で購入できるようになりました。このような購買力上昇は、人々の衣食住を快適にして、社会保障なども安定させていきました。

ピケティの楽観的成長予測

 

気になる将来の経済成長率ですが、ピケティの楽観的な予測として世界成長率1~2%でキープするだろうと述べられている。ただしこれには条件付きで、①富裕国の生産成長が大幅な技術開発が継続され(SDGs)1%程度で推移すること。②新興国経済が富裕国との差を縮めて、これを妨げる政治的・軍事的な行為が起きないこと。という2つを挙げています。グローバル化による世界の成長率水平化を目指す傾向も、長期的な経済成長の維持には必要だと考えられています。

第Ⅱ部 資本/所得比率の動学

第3章「資本の変化」(119頁~146頁)

資本性質の変化

 

イギリス・フランスの例で考えると、資本の量は第1章のβ値(所得と資本の比率)で測ると18世紀20世紀初期までは700%あたりで推移していました。この資本の中で、年々下がってはいますが農地が占める割合は最も高いものでした。20世紀の大戦がはじまると、各国は軍事・政治・経済衝突から国内資本は最低で200%あたりまで落ち込みます。しかし、21世紀にかけて、国内資本は猛烈な勢いで回復し、すでに500%以上までに増加しています。重要なポイントとして、総量は元の推移に戻りつつあるが、資本の中身が全く異なっていることに注目してください。今や農地の占める割合は2,3%で、大半は住宅資本や金融資本・工業資産などです。資本の重要性は変わりませんが性質は大きく変わりました。

ケインズ政策とインフレによる資本再分配の失敗

 

 

国民資本は「公的資本」と「民間資本」に分けられます。上記にもあるように、20世紀の大戦で莫大な資金が必要になった政府は公的債務を発行して、これを賄いました。公債を購入でき富裕者層はこれを大量に購入し、この年利でさらなる利益を持つというさらなる格差が生まれ、政府も膨れ上がった公債の返済に追われていました。世界恐慌による失業者も増加していたため、国家の経済非介入や私的資本所有の独占に批判の声が集まりました。そこで、政府はケインズ的な市場介入政策や、インフレによる再分配のメカニズムで応えようととしました。インフレを起こせば債務の価値は萎れていき、過去の公債からの利子による不労所得を廃することができ、公的資本を再分配することができます。

しかし、このインフレによる再分配は非常に扱いが難しく、所得が急激に増える社会集団と伸び悩む集団が生まれて、失業率はそれほど改善できずに、スタグフレーションという問題を引き起こしました。

ケインズ的市場介入政策で企業の国有化を進めてきたフランスでしたが(ルノーもこの流れに乗じて国有化されました)スタグフレーションで打撃を受け、この市場介入政策は緩められていき、再び公的資本は減少し、民間資本が拡大を見せているのが今の状況です。ケインズは公債の負担削減と、公債利子による世襲財産の撤廃にはインフレが効果的であるが、必ずしも正当な方法ではないと考えていたようです。この問題の正解が見つかれば、世界はもっとよいものになるでしょう。

次回はいつ投稿できるがわかりませんが近いうちにできるように頑張りたいと思います。以上、ご覧いただきありがとうございました。

 

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